『月は無慈悲な夜の女王』の感想

※ネタバレ有

読書メーターは小説の感想が書きにくいよ~

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読書メーター君はかける文章量が255文字しかない。わりとあっという間に埋まってしまう。コメント機能で下に続けていく方式をとることになるが、コメントには「ネタバレ注意」を出すことができないんだよね。小説の感想書きにくい。

 

結末について

というワケでネタバレ有の感想なのだが。

結末が私の好きなモノではなかった。

本がつまらなかったわけでは無い。読書メーターに書いた下記はウソではなく、読んでるうちにワクワクしてくるすごい良い本だと思う。

読み手によって受け取り方、想像の膨らませ方が変わる良い小説だなと思った。

 

主人公たち月世界の目論見はだいたい叶う。

地球からの攻撃は止み、月世界は穀物をはじめとした富を搾取される側ではなくなる。地球と交易し、お互い欲しいものの対価を与え合う存在になる。

主人公たちが革命の対価に払ったのは教授とマイク。教授は死に、マイクはただの計算機になってしまう。

 

私は反逆者たちが最後に成功を収めるのは好きじゃないんだなって思った。今回も最後のほう読みながら「成功しちゃうんだ~」って。

主人公サイドが強すぎた。というよりマイクが万能過ぎた。ほとんどマイクにできないことはなく、スイスイと搾取側だった地球の月行政府を打ち倒し独立成功。地球連邦からの侵略を跳ね除け、逆に痛撃を与え和平に持ち込むことも主人公の思惑通りに進んでいった。最初は徒手空拳だった主人公たちなのに「想定通りうまくいったぜ!」っていうことが多い。

もちろん主人公たちが苦労したこともあった。ただ、例えば地球に乗り込んでの交渉失敗はのちにすべて教授やマイクの筋書き通りであったことが知らされる。マイクが定期的に報告していた独立革命の低い成功率は何だったのか?と思えてしまう。*1何を障害だと、困難だと捉えていたのか。

 

途中自分が想定していた困難は、主人公たちが秘密組織から正式な政府となってしまった結果統治ができなくなることだった。その困難は描かれはしたが、「パッと出の無能が主人公サイドの邪魔をしてきた。あっさり跳ね除けた。」くらいに一蹴されてしまう。最終決戦の時もそう。政敵は口先だけのザコ。苦戦した政敵なんて1人も出てこなかったな。

 

似た話

北方謙三の『水滸伝』は好きだけど後継の『楊令伝』は読んでて微妙な気持ちになったし、何なら楊令伝だけ売った記憶あり。『水滸伝』はいいんだよね。英傑が力を尽くして北宋に抵抗しながらも、最後梁山泊が落ちる。梁山泊宋江は楊令に後を託して死ぬ。梁山泊が落ちる以前もめちゃくちゃ人死にますからね。巨大な敵対勢力に挑む本人たちの苦難が良く描かれている。敵側である北宋にも魅力的な政治家や将軍がたくさん出てくる。

『楊令伝』はもう反逆者たちが強すぎる。上で書いた北宋側の政治家や将軍もどんどん死んでいって、楊令が指揮する梁山泊は負けなし。金王朝の軍すら跳ね除ける。もう読んでて「あ~、どうせ楊令勝つんだな……」ってわかり切っちゃうんだよね。『水滸伝』にあったドキドキが無いよ。

 

という似た話を思い出した。私は失敗する革命が好き。

*1:1:53であるとか、1:7とか時期によって変わっていった。