本シリーズは全10話?らしいので、もう終盤に差し掛かっている。
全体
説明不足で視聴者が置いてけぼり。1話からの欠点が今回の話では際立っていた。
謎解きに込められた意図も省略されて、ずいぶん薄い話となっている。
薄味
今回の話は長編の導入である。健吾からの謎を解きつつも、健吾が追っている薬物グループについて複数の情報が出てくる。アニメだとそれだけ。
原作を読むと、「なぜか積極的に小鳩くんを連れ出す小佐内さん」「謎解きを止めるどころか焚きつける小佐内さん」に対して小鳩くんが不審の念を抱いていく重要な回であったはず。かわまた妹に健吾からの連絡を済ませた後の「わたしがごちそうしてあげるね!」といったセリフも、小鳩くんの不審の念がピークに達した後に発された意味深なセリフとして描かれている。
これがアニメだと読み取れず。いちおう謎解きを促進するセリフはあったが大幅に省略されていた。謎解きをけしかけるという行為は「かわいい小動物系ヒロイン」であるアニメ小佐内さんにそぐわないからか?長編における大事な要素であるのだが。
夏休みに振り回されていることについてはアニメ小鳩くんの気持ちはほとんど示されない。健吾に愚痴くらいは言っていたが。
このせいで、「まるで男女交際だ」とかいうセリフもアニメだと意味が解らなくなってしまっている。お前ら四六時中一緒にいるから付き合ってんじゃないの?って思うのが自然。原作小鳩君はくどいほど「互恵関係であり依存関係ではない」ことを強調している。頻繁にかかって来る連絡やじゃれ合いのようなメールに対して不信の念を抱いたうえでの「まるで男女交際だ」というセリフだった。
上記のような「原作だと意味の込められたセリフ」に対してアニメはただ表面をなぞっただけで登場人物に言わせていることが多い。ここは心底残念。
健吾に電話して確かめれば?
誰もがこう思うはず。原作では電話をする。小鳩君は健吾が出ないと即あきらめて、折り返しの電話にも出ない。なんでかって?小佐内さんに謎解きを煽られた小鳩くんは、謎解きがしたくてしたくてたまらなくなっているから。
原作ではこういった単純な疑問に対して答えを提示してくれる。納得させてくれる。*1話が面白いのに読者を置いてけぼりにしない丁寧さが米澤作品の良いところだと思っている。
アニメは見ている側を置いてけぼりにしてしまう。この置いてけぼり感はつらい。他にもかわまた妹に「健吾は追いかけてったよ。それだけ。頑張って。」と伝えるシーン。視聴者的にはよくわからないシーンだ。実は小鳩もよくわかってない。健吾に頼まれた意味不明な伝言だと地の文でいう。「なんだ、これは"意味わかんない伝言"でいいのか。」と読んでいる側はちょっとは理解させられた気になる。*2
アニメじゃ小鳩君は真顔で伝言を伝える。それだけ。視聴者のお気持ちアフターケアしてくれ。
その他
・永久に小鳩君がハンバーガーを食べられないのは面白かった。
・「ぼく、またやっちゃってたな」←流石に痛い。小佐内さんに焚きつけ役をやらせられないからってこんなセリフ小鳩くんにしゃべらせないで……。
・今回の小佐内さんは変装もバッチリ決まってたし、着替えたあとの姿もかわいかった。「かわいい小動物系ヒロイン」方面に対する努力はうかがえる。まあアニメのヒロインはかわいければかわいいほどよい、というのも真理である。