OVA「乙女はお姉さまに恋してる~2人のエルダー~」Blu-ray SET 感想

3月某日、秋葉原もかわっちまった。最後に"秋葉原らしい"場所行って帰るか……と思いげっちゅ屋の予約コーナーを見たらこの商品を見つけ、即予約してしまったんだよね。9900円也。特典のタペストリーももらえたのでそこは満足している。

 

おとぼく2にOVAがあることは当時から知っていたんだけど、PV見たときに「なんかキャラデザからしてらしくないな……」と思い手を出さなかった記憶。

1話30分弱で全3話。2012年に出たときは1巻1話でBlu-rayは約7800円、計3巻で22400円とかいうお値段だったらしい。値段でも手が出せるものではなかったね……。DVDは1000円ちょっと安かったけど、それでも3巻揃えると2万弱かかるからねえ。

のり太氏描き下ろしスリーブ、よい

 

シナリオ

ゲームのシナリオをなぞるだけではなかったことは良い点と思う。

ギュギュっとエピソードを短縮するのかと思いきや、千早ちゃんと薫子さんの出会い方や男バレの方法と和解まで違う話が展開された。演奏会の話はオリジナルだし、千早ちゃんと千早母が抱える過去も原作の面影を残しつつアレンジされていた。

かといってゲームを無視するわけでもない。ゲームだと5月に組み込まれていた、薫子さん父親の会社から借りたお金を返せなくなった下級生との別れも入っていた。

OVAの尺に合わせて新規にシナリオを作っていたのは良い。

 

ただし、気になったのがエルダー選挙のところ。千早ちゃんのエルダー選挙に臨む態度はゲームと少し違うが、それでも展開は概ねゲーム通り。エルダー候補4人*1がそろったところで、票の譲渡が行われるのはゲーム通り。ただし、譲渡先が原作と変わっている。

 

●ゲーム

茉清さん→千早ちゃん

初音さん→薫子さん
●アニメ

初音さん→千早ちゃん

茉清さん→薫子さん

 

細かいところなのだが、ここをあえて変える意味がわからない。

理由を考える。茉清さんのエピソードはばっさりカットされていて、ほとんどアニメに出てこない。つまりアニメだと茉清さんが千早ちゃんに票を譲る理由がないからか。

かといって、アニメで茉清さんが薫子さんと票を譲った理由である「長年の友情」もほとんど描写なかったのだが……。

初音さんが千早ちゃんに票を譲るならば、優雨とのくだりがちょびっとあったぶん自然。ゲームと違って千早ちゃんがデザート1つ作ってあげただけなのだが。

 

いやちょっと許せないんですよね。僕は初音さんが好きなので。そして、初音さんと薫子さんは「櫻の園のエトワール」*2時代から一緒に寮で暮らしている親友であったはず。だからこそ、エルダー選挙の場で初音さんが薫子さんに票を譲ったわけで、ここを変えられてしまうのは「なぜ????」と思ってしまった。

 

ここの部分をみて、このアニメはどこを向いているのだろうかと思ってしまった。

おそらくこのアニメ、99%ゲーム既プレイ者しか見ない。OVA用にシナリオはアレンジされているとはいえ、原作にあったいろんな説明をすっ飛ばしたり、軽く流している。*3それこそ茉清さんと聖さんなんて突然登場して主人公たちと話しているし。見る側はゲームの知識があるからついていける想定で描かれているんだろう。

であれば、こうしたゲームその他メディアミックスで意味が込められていた部分を変えてしまっているのはさみしく思う。

 

作画

及第点ってところかな。昔感じた作画の違和感はそこまでではなかった。

人物がアップになっている部分はきれいに描かれているし、特に薫子さんはちゃんと美しかった。主人公の千早ちゃんはやや違和感は残った。

 

引きのカットは適当な部分が散見された。図書館のシーンなど、すごい広い空間なのにポツンと主人公とヒロイン2人きりだったりと、省エネしているのだなとは思ってしまう。

 

お風呂シーンの千早ちゃんの体はしっかり男性なのでそこは高得点。だけど寝巻が白基調でちょっと変わってしまっている。お母さまが選んだピンクのやつでないのか。

 

ラストの百合畑のシーンなどはキレイだった。力を入れるところは合っていたと考えるとよかった部類かと。

 

人物描写、というか初音さんについて

先のシナリオで文量を書いた通り、私は初音さんが好き。

正直申し上げると今作の初音さんはゲームと変わってしまっている。ほかのキャラクターはそんなことなかったのだが。

 

尺の都合もあるだろうし、初音さん登場シーンもそこまで多くないのだが気になったのは以下2点

・雨に打たれていた優雨が寮に戻ってきた後のシーン。「優雨ちゃんなんてこと!貴方の体のことはあなたが一番よくわかっているでしょ!(後略)」といった具合で厳しいというかしっかりもののお姉さんといった具合。

 

・アニメオリジナルの演奏会の件。以下のやり取りが行われる。

千早「(薫子さんが去年チェロを弾いたことについて)優雅さと力強さを兼ね備えた、薫子さんにぴったりの楽器ですよ」

初音「ほんとうに!すごかったですね!」

薫子「初音さん!*4それ、褒めてないでしょう!」

初音「え?でもあんな音そうそう出ないじゃない!講堂中が凍り付いたもの!」

薫子「やっぱり褒めてない!」

 

初音さんってこんな皮肉言う人ではなかったよな。薫子さんには冗談も言っていた気がするが、ここまで馬鹿にしたことは言わなかった気が。

声優さんもゲームから変わっていて、高くてふんわりしていたゲームの声とは違い低めでしっかりした声。アニメの初音さんたぬき顔とかしなさそう。とにかく初音さんの違和感がすごい。

 

いちばん好きなキャラが変わっているということは、作品を評価できない大きな理由になってしまうな……。

 

その他

おまけで宣伝映像が入っているのだが。ほとんど変わらない映像が4つも入っている。まあほんとにおまけなので。

気になったのがおまけに入っている「」

OP曲はめちゃくちゃすき。矢鴇つかささん流石だ。

まとめ

そんなわけであまり評価できないなというのが正直な感想。もちろん2話とか良いシーンもあったのだが。

*1:千早ちゃん、薫子さん、初音さん、茉清さん

*2:初代おとボクの1月後が舞台。前作で妹だった由佳里ちゃんや奏ちゃんが姉となり、新入生として薫子さんや初音さんが妹となる。

*3:一例を挙げる。かおりさんが千早ちゃんを後ろから抱きしめて「あなた、やはり男の方なのね」と確証されてしまう。それって「千早ちゃんが普段偽乳をつけている。だから触られてしまうと体温の有無でバレてしまう」ということを知ってないと意味の分からないシーンになってしまう。アニメには描写なし。

*4:ゲームだと初音と呼び捨てのはずだが……